本事業について


 本事業は、日本学術振興会(JSPS)が実施する平成25年度 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラムの採択事業です。海外の研究者・研究グループ等と協力して国際共同研究を行う取組において、相手側の機関等に若手研究者を長期に派遣し、若手研究者が学術研究の国際水準と多様性を理解し、世界の様々な課題に挑戦する機会の拡大を図る事業の一環として、東京大学 生産技術研究所 岡部 徹(主担当研究者)が中心となって実施する「次世代のレアメタル製錬技術の創出に向けた若手人材育成と国際ネットワークの形成」(平成25年度〜平成27年度)が採択され、平成25年10月より本事業がスタートました。

事業目的


 本研究プロジェクトでは、次世代のレアメタル製錬・リサイクル技術の創出に繋がる国際共同研究を若手の研究者が中心となって実施することで、今後20年以上に亘って長期的に維持することが可能な若手研究者を中心とした有機的な国際研究ネットワークを形成することを目的としています。

計画概要


 日本の材料・素材分野を支える金属の製錬・精製技術は、これまでの日本の産業競争力を支えて来た重要な科学技術分野です。非鉄製錬を中心として発展したレアメタルの素材産業における日本の技術力は依然として世界を牽引しています。しかしながら、海外の大手資源メジャーによる資源争奪の過熱や資源ナショナリズムの台頭、ハイテク機器に欠かせないレアメタルの需要の増大や鉱石品位の低下など、資源を取り巻く様々な問題が顕在化しています。資源の有効活用技術、リサイクル技術、環境に配慮した次世代のグリーン製錬技術といった今後の日本の競争力となり得る技術の研究開発は益々重要性を増しています。その一方で、大学等の学術分野での当該分野の人材の減少は顕著で、将来の金属製錬分野を担う研究者の育成が大きな課題となっています。本分野において先端的な研究に取り組んでいる研究拠点の数は少なく、非鉄金属製錬分野における次世代技術の研究開発を担う国際的なネットワークを有する若手人材の育成が極めて重要となっています。

 本研究プロジェクトでは、世界のトップインスティテュートとして知られるマサチューセッツ工科大学(MIT)東京大学生産技術研究所(IIS/UT)の両研究機関の若手研究者を中心として、共同で次世代のレアメタル製錬・リサイクル技術の研究開発に取り組みます。具体的には、MIT の若手研究者が主宰する研究室に本国の有望な若手研究者を長期的に派遣し、国際共同研究を行いながら、次世代を担う国際的研究ネットワークの形成を推進します。さらに、派遣する若手研究者を中心とする研究ネットワークをより広範で有機的な頭脳循環の場とするために、ノルウェー科学技術大学(NTNU)、ボストン大学(米国)、サスカチュワン大学(カナダ)、チリ大学、MINTEK(南アフリカ)などの金属製錬技術に関連する研究室と連携した国際ネットワークの構築を図ります。若手研究者が主体の共同研究と国際研究ネットワークの形成を促進することで、今後20年以上活かせる国際的な頭脳循環型研究環境を戦略的に構築します。

若手研究者の人材育成と国際共同研究に向けた取り組み


国際共同研究テーマ


 学術的にも産業的にもインパクトが大きいグローバルな問題に関するテーマを国際共同研究として設定し、研究の国際展開を図ります。ハイテク製品の高機能化や発展途上国の経済成長が進み、レアメタルの需要が益々増大する中、環境に配慮した製錬プロセスや生産性の高い製錬プロセスの開発が求められています。中でも、白金族金属等の貴金属を環境に配慮したプロセスでリサイクルする技術や、チタン、モリブデン、レニウム、タングステン等の特殊金属の生産性の高い製錬プロセス技術の開発は、今後の高機能素材産業には欠かすことができません。本プロジェクトでは、これらの産業上重要であるレアメタルを対象として次世代型の新規製錬・リサイクルプロセスの開発を国際共同研究として設定しています。

事業紹介パンフレット